成年後見制度の仕組み

加齢により判断能力が鈍り、論理的思考ができなくなってきた場合、これを治療することは著しく困難です。そのため、判断能力が鈍ったあと契約の締結等を行うことは非常に危険であるといえます。そこで、このような場合に判断能力の著しく鈍ってしまった方を保護するための制度として成年後見制度が認められています。この制度は、判断能力の著しく鈍ってしまった方(以下、成年被後見人といいます)の契約行為における危険性をできるだけ排除するために裁判所が成年後見人を選任し、この者に成年被後見人の財産の管理、契約締結の代理、法律行為の取消を行う権利を付与するというものです。この場合、成年被後見人は契約を締結する場合、成年後見人の同意がなければ取り消されてしまうという制限が課されます。ただし、成年後見制度は日常的な行為(例えば、スーパーマーケットで食品を購入する行為や映画館などのアミューズメント施設で単純なサービスを受ける行為などをさします)と身分行為(離婚や認知等家族に関する行為をいいます)だけは同意がなくても有効となるとしています。

そのため、成年被後見人になったとしても、日常生活において何らかの支障をきたすわけではありません。成年後見制度によって制限されるのは、不動産など一般的に借りが高いとされる物に関する売買契約、不動産等の賃貸借契約(不動産等の利用形態が制限されるものに限ります)、そして有料老人ホームへの入居等一般的に高額な対価を支払わなければ受けることのできないサービスを受けるための契約(ここには、料金が高額な手術を受ける委任契約や一般的に支払い金額が多いとされている保険契約も含まれます)です。このように、成年後見制度は成年被後見人の保有財産に強い変動をもたらす契約のみに同意権を付していると言えます。とすると、成年後見人は成年被後見人の重要な財産を実質的に自由に扱うことができるということです。そのため、成年後見人の選定手続きにおいては成年後見人となるべきものと信頼関係を構築することができるか否かをきちんと判断する必要があります。信頼できない人間が成年後見人に就職すると、この者により成年被後見人の財産が悪用されてしまう危険性があります。実際に成年後見人による横領事件や背任事件は相当数起きています。そのため、成年後見制度を活用しようと検討されている方は成年後見人となるべきものの人となり等を慎重に吟味する必要があります。